![]() | この記事の監修者と編集者 監修:公認心理師/臨床心理士 FUMI(左写真) |

人に話を聞いてもらうだけ? 受けたからってどうなれるの?
カウンセリングって一言でいってもイメージが湧きづらいですよね。
でも実は「人に話を聞いてもらう」だけではなく、カウンセラーとの対話はその先がむしろ重要なポイントなんです。
なぜならそれは状態を改善するのがカウンセリングだから。
それでは、これからカウンセリングの役割や効果についてわかりやすく知っていきましょう。
目次
カウンセリングとは「心理相談」です
カウンセリングは心理相談のこと。
カウンセリングを受けに行く相談者を「クライエント」と呼び、そのクライエントの悩みを聞くのが「カウンセラー」です。
カウンセラーはクライエントが何に悩んでいるのか、どのような苦しみを抱えているのかを傾聴し、必要があれば心理療法を用いて対応します。
カウンセラーとクライエントで悩みについてどうするべきかを考え、行動していくことがカウンセリングなのです。
カウンセリングを受けるのではなく、友達や家族に相談することはどうなのか。
また、カウンセリングについてのよくある誤った理解についてもご紹介していきます。
友達や家族への相談と何が違う?
「友達や家族に悩みを相談すること」と「カウンセラーに相談すること」では多少の違いがあります。
例えば周りの人に相談したとき「そんなことくらいで悩むなんて」と悩みを軽く扱われたり、相手が「そういえば私も最近…」なんて話し始めて自分の話しを中断されたことはないですか?
悩みを話せる友達や家族といった存在が周りにいることは良いことです。
しかし彼、彼女達は悩みを聞く専門家ではないからこそ、あなたを無意識に傷つけてしまうことがあります。
友達、家族に相談したことでますます気分が塞ぎこんでしまったり、症状が悪化してしまう場合もあり得るのです。
カウンセラーとは、人間の心理状態について学び、そして訓練を受けた悩みを聞く専門家です。
クライエントの話すこと、行動について否定することなく受け入れ、カウンセリングで聞いた内容については守秘義務があるため他者に漏らすことがありません。
「こういった症状のクライエントには、こういう対応はいけない」ということを知っているので、クライエントによってその時ベストな対応を取ってくれます。
また、カウンセラーはクライエントの無意識の仕草、目の動きや態度、話しの内容など些細なことから本人も全然気づいていない悩みの原因などを見抜きます。
だからこそクライエントは安心してカウンセラーに悩みを話せるのです。
カウンセリングについての間違った理解
カウンセリングへ行ったことがないと、
- 「カウンセリングに行くなんて、私は心に問題があるのかな…」(不安)
- 「カウンセラーは相談のプロなんだから、悩みに対して何かいいアドバイスをくれるはず!」(期待)
こういった考えをする人も多いと思います。
しかし実はこうした不安や期待は、間違った理解なのです。それぞれについて、詳しく解説していきましょう。
通う人は、心に問題がある…?
日本はまだまだカウンセリングに対して消極的なところがあります。
そのため「カウンセリングへ通っている」という人に対して、「精神的にどこか悪い部分があるの?」とか「心に問題が…?」なんて、ネガティブなイメージを持ってしまう人達も残念ながら少なくありません。
実は欧米ではとくにこれといった悩みがない人だって、日常的にカウンセリングを利用しています。
それは普段の自分を知っておくことで、ストレスを感じたときの自分との違いがわかるため。
あるいは、仕事へのモチベーションを上げたいときや、もっと魅力的な人間になりたいからというポジティブな理由からです。
重い精神的な問題を抱えている人がカウンセリングを利用することもあります。
しかしそうではない人、精神的に強い人だってカウンセリングへ行きますし、利用も可能なのです。
カウンセリングへ通っていることは決してネガティブな行動ではありません。
自分のためになる、そして自分の未来を考えた行動なのです。
カウンセラーは問題の解決方法をすべて提示してくれる…?
カウンセラーというと、「相談したら自分の悩みに対して絶対に的確なアドバイスをしてくれそう」なんて感じますよね。
でもカウンセラーからいつも、どんな悩みに対しても必ず率先して「こうしましょう」と指示してくれたり、「それはこういうことなんですよ」と教えてくれることはないのです。
その時必要なことであれば、カウンセラーによっては指示をしたり、悩みの解決方法を教えてくれる場合もあります。
でも基本はあなたの話しを聞いて、悩んでいる気持ちに共感する、傍に寄り添って見守りの姿勢で対応するのがカウンセラーという存在です。
「こうしてみてはどうでしょうか?」といった、アドバイスをくれることもあります。
しかしあなた自身が考え、気づいて行動することが大事なので、そのアドバイスも控えめな場合が多いでしょう。
控えめだからといって、あなたのことをないがしろにしているのではありません。あなたの意思を尊重しての対応です。
【意味・目的】なぜカウンセリングが必要なの?
カウンセリングの意味や目的として挙げられるのが、
「カウンセラーに相談することで固定観念にこだわらなくなり、もっと自分らしく自由に生きられる」
というもの。カウンセリングを受けることで、自分にポジティブな変化を与えられます。
「絶対にこうだ」という固定観念がなくなれば視野も広がるでしょう。
ネガティブな気持ちからポジティブ思考に変われば、日々の悲しみにも冷静に対応できるようになります。
そんな人生を送るためにもカウンセリングがあるのです。
自分だけの固定概念から視野を広げる必要があるから
固定概念やこだわりを捨てて視野を広げることで、物事を違う視点から見ることができるでしょう。
そうすると自分が悩んでいることに対しても良い解決策が思い浮かびやすくなるのです。
「あの人は絶対に私のことを嫌ってる」という思い込み、「私は話すことが苦手だから接客業なんて出来ない」なんてこだわりが視野を狭めてしまいます。
しかしカウンセラーという第三者と話すうちに、「もしかすると嫌われていると感じるのは私の勘違いかも」「スピーチ力を身につければ苦手じゃなくなるんだ」と思えるようになるでしょう。
嫌いな人、苦手なことに対する感情や自分のコンプレックスを受け入れられたなら、もっと違った考え方ができるのです。
凝り固まった頭を柔らかくしてくれるのがカウンセリングなのです。
ポジティブな思考サイクルにしていく必要があるから
ポジティブ思考になると、仕事でミスをしたときに「どうして自分はいつもこうなんだろう…」と落ち込むのではなく、
「ミスしたところに気を付けて、次は失敗しないようにしよう!」と前向きに考えられます。
ネガティブな思考サイクルが癖になっていると、ちょっとしたことで自信を失くしてしまったり、他人のことを信用できなくなっていきます。
そのせいで今よりももっと精神的に苦しいと感じるようになるのです。
楽観的かつ肯定的な思考が癖づくと、自分に自信が持てるだけではなく、周りの人のことも「この人を信じてみよう」というポジティブな見方ができるようになるのです。
そうすると仕事や恋愛、人間関係においても過ごしやすくなり、悩むことも減っていくでしょう。
苦しみや悲しみへ冷静に対処していく力を得るため
カウンセリングを受けると、苦しみや悲しみ、ストレスに対して冷静に対応するための力を得られるようになります。
真実ではない情報や、人の意見で優柔不断に流されることなく、自分の生きたい人生を生きられるようになるのです。
深く悩んでいると、自分はどうしたらいいのか自信を喪失してしまいますよね。そこへ更に嫌なことが起きると、もっとパニックになるでしょう。
冷静に対処しようとしても自信がないので嘘に惑わされたりして、悪循環からどんどん深みに嵌ってしまいます。
カウンセリングで自分の価値を大事にできるようになれば、トラブルが起きたときも自分で考え、自分のしたいように動ける人になれます。
ちょっとしたストレスには耐性がついて、周りの様子を見つつ事実と自分の経験則から、その時取るべき最善の行動が取れる人になれるでしょう。
【効果】受けると良くなるの?
カウンセリングを受けることで、“現状よりも良い方向へと変わっていく可能性が高い”といえます。
「必ず(絶対に、確実に)良くなります」とハッキリ言えないのは、症状が良くなるかどうかはクライエントそれぞれによって違うからです。
悩みごとって1つ解決しても、また1つ出てきてしまったりして、なかなか0になりませんよね。
生きている限りどうしても悩みが完全になくなることってないのです。
カウンセリングでは悩みを受け入れて、「これについてはそんなに悩まなくてもいいんだ」と思えることがポイントとなります。
今の症状が良くなるのも、悩みが悩みではなくなるのも、クライエントのモチベーションの高さによって変化します。
「そこまで悩むことでもなかったかも」、「自分はこういう生き方でいいんだ」とあっけらかんと思えるようになれば、“以前より良くなった”のだといえるでしょう。
やり方・悩み解決へのアプローチ方法
カウンセリングの方法であったり、悩みを解決に導くアプローチ方法は、それぞれのカウンセラーによって変わります。
一般的な流れとしては「事実認識→感情分析→実践→そして改善」です。
現状を理解して自分の心と向き合い、今の状況についてどう感じているのかを考えてみます。
そして自分はどうしていきたいのか、変わるためのアクションを実践していくことで、気持ちが前向きになっていくのです。
【事実認識】現状を正しく理解する
今、自分はどういう気持ちでいるのか、言葉にするのって結構難しいですよね。
しかしあえてカウンセラーに対して「仕事へ行きたくないのは上司に怒られることが嫌だから…」、「怒られる理由は仕事でミスをするから。ミスをするのは○○が原因で…」
などと自分の気持ちを話すことで現状を自覚、理解できるのです。
カウンセラーはクライエントの話すことをそのまま受け入れてくれます。
「それは違うんじゃない?」とか、「そんなのあなたが悪いよ」なんて否定することはありませんので安心してください。
また、クライエントの話したくないことを無理やり聞き出すこともないので、自分がそのとき話したいことだけ話しても大丈夫です。
最近あった嫌なことだけではなく、過去のトラウマに遡って話しを聞いてもらうこともあります。
そうすることで、あなたが今こんなに苦しんでいるのはどうしてなのか?何が原因なのかも明らかになってくるでしょう。
どうして自分はこんなに悩んでいるんだろう。一体何に怒って、悲しんでいるんだろう。
悩みが整理されて明確になり、理解できると、やがて自分の心とも向き合えるようになってくるのです。
【感情分析】自分の心と向き合う
現状の自分について理解できたなら、次は自分の心と向き合っていきます。
自分の気持ちを受け入れるのは、実際やってみるとなかなか簡単にはいきません。
でも「今の自分をどう思うか」、「どうしていけばいいか」を考えることによって、そんなに難しいものではなくなります。
カウンセリングは1人で孤独に進めていくのではなく、カウンセラーと、あるいは家族カウンセリングなら自分と自分の家族とカウンセラーと行います。
グループカウンセリングなら自分と同じ悩みを持つ人達と行うなど、あなたを見守ってくれる人が傍にいるので安心してください。
この状況をどう感じているか
カウンセリングを受けて、自分は今の状況をどのように感じているのかを、カウンセラーとともに考えます。
「職場の人に嫌われていることについて、非常にイライラしている」、「悲しい、泣いても泣いても涙が止まらない」など、自分の感情を吐露するのです。
恥ずかしくて誰にも言いたくないこともあるでしょう。
カウンセラーに引かれないかな、なんて心配になるかもしれませんが、カウンセラーはあなたに引いたりしません。
話しているうちに泣いてしまってもいいので、思いきって現状に対する気持ちを打ち明けてください。
心の中のモヤモヤする気持ちを表に出すと、心がスッキリしていきます。
感じていることを話して泣いて、怒って、そのあとに気持ちが落ち着くことをカタルシス(精神浄化)といいます。
すると、さっきまでと違って冷静に考えられるようになるのです。
この状況をどうしていきたいか
感情を吐き出してカタルシスを感じ、気持ちが冷静になったなら、次は現状をどうしていくかを考えます。
どうなりたいのか、自分はどうしたいのかをカウンセラーとともに突き詰めていくのです。
カウンセリングを受けて精神的に良い状態になるためには、自分自身のモチベーションも大切です。
カウンセラーに「どうすればいいですか?」と聞いて「こうしましょう」と言われる指示に従うのも大事です。
しかし、自分で「こんな風に変わりたい!」と思う気持ちが強ければ強いほど、自分の理想の未来へと進んでいけるでしょう。
このとき大切なのは、「絶対にこうしないといけない」と追い詰められたように考えすぎないこと。
「こうなれたらいいな」、「こんな風にしてみたいな」と楽観的に考えることで、悩みへ柔軟に対処していけます。
【実践】変わるためのアクション
あなたが変わりたいと思ったなら、カウンセラーはその希望を叶えるためのサポートをしてくれるでしょう。
「こうしてみるのはどう?」と提案される場合もあるので、それがあなたにとって興味を惹くようなことであれば、是非実践してみてください。
途中で行き詰ってしまったらカウンセラーへ相談することもできます。
「そんなときは、こういうことをやってみるのは?」というアドバイスを受けて、別の方法を思いつくこともできるでしょう。
変わるためのアクションに奮闘しているあなたのことを、カウンセラーは優しく見守ってくれます。
失敗してもカウンセラーは見捨てません、自分が納得できるまで何度でも挑戦してください。
【改善】目標をクリア・気持ちが前向きになった
自分が「こう変わりたい」と決めていた目標をクリアできた。
クリアできなくても気持ちが前向きになれたなら、それがあなたの“良い状態”です。
自分では改善できたかわからない場合は、カウンセラーから「前よりも良くなってきましたね」と教えてくれます。
ネガティブ思考からポジティブ思考に変わることができれば、自然と周りの人を頼れるようになったり、信じられるようになるでしょう。
悩みについてもすぐパニックになることなく、落ち着いて対処できるようになります。
カウンセラーから「もう(カウンセリングしなくても)大丈夫そうですね」と言われ、不安に感じたときの感情を不安分離といいます。
無理をしてカウンセリングをやめることはありません。
ですが、この不安を乗り越えられたなら、本当の意味であなたは目標をクリアした、改善できたといえるでしょう。
カウンセリングは客観的視野を取り入れ体系立てて悩みの改善サイクルを作るための心理相談
カウンセリングは自分の中にある「こうしないといけない」、「こう思われている」などの固定観念やコンプレックスに悩んでいる現状を、客観的に見ることから始まります。
そしてそんな自分の状態をどう思うのか、どうしたいのかを考え、変わるために実践していくのです。
カウンセリングはカウンセラーというサポートを得て行いますが、1から10までカウンセラーの言う通りにすることはありません。
カウンセリングによって良くなるかどうかは自分で考え、自分で行動していくことが要となります。