この記事の監修者と編集者 監修:公認心理師/臨床心理士 FUMI(左写真) |
どう選んだらいいのかな?
この疑問、本当によくわからないですよね。でも実は非常にわかりやすくて、むしろシンプル。
医療機関か非医療機関か、つまり病院かそうじゃないかということです。
細かい違いなども交えて、あなたの悩みにあったのはどれか、答えを出していきましょう。
目次
カウンセリングと精神科・心療内科の違い
カウンセリングと精神科・心療内科には用いる治療手段に違いがあります。
それは「薬物療法」か、それとも「言葉や行動で治す」かです。
この違いは、カウンセラーと精神科医・心療内科医の経歴や資格に関係があります。
カウンセラー・心理療法士 | 大学または大学院にて心理について学ぶ |
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精神科医・心療内科医 | 医学部に進んで医師として学ぶ |
両者の違いを知っておくことで、あなたの抱えている悩みをどう解決するか、その方法も選択しやすくなるでしょう。
「薬物療法」か「言葉や行動で治す」か
まず「薬物療法」と「言葉や行動で治す」、この違いを見てみましょう。
薬物療法 | 抗うつ剤であったり抗不安薬などの薬を処方する方法で、患者の悩みの緩和や改善にあたること。 |
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言葉や行動で治す | 薬を処方するのではなく、言葉によってあるいは行動によって悩みの緩和・改善にあたること。 |
精神科医や心療内科医が行うのは主に薬物療法で、カウンセラーが行うのは言葉や行動で治すという手段。
「私はどうしても薬が手放せない」というクライエントは薬物療法を選んだり、
反対に「薬にばかり頼るのは怖い。薬断ちしたい」というクライエントならばカウンセリングを選ぶ場合もあるでしょう。
「薬物療法」にはその良さが、カウンセリングの「言葉や行動で治す」という療法には別の良さがあります。
どちらを選ぶのもクライエントの自由です。
ただ、その人の抱えている症状が、重度であるかそれとも軽度・中度かによって、カウンセラーから精神科・心療内科を勧められるというパターンもあるのです。
「重度」か「軽度・中度」か
カウンセリングと精神科・心療内科の違いは、クライエントの精神状態や状況が「重度」か「軽度・中度」かにも深く関係しています。
精神的な病として認知度の高い「うつ」を例に解説しましょう。このうつには軽度・中等度・重度といった段階があります。
軽症うつ病 | 社会生活を送る上でそこまで支障がない状態 |
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中等度うつ病 | 日常生活を送る上で何らかの支障がある状態 |
重症うつ病 | 日常生活を満足に送ることのできない状態 |
例えば日常生活を送る上でそこまで深刻ではない状態であると判断されると、この場合は軽度または中等度と判断されます。
そして、カウンセリングによる「言葉や行動で治す」という手段を取る場合が多いです。
しかし日常生活を送ることが困難であると判断された場合は、重度の症状ということから精神科や心療内科にて薬物療法という手段を取ることがあるでしょう。
現在のところ、うつという病を改善していくには薬物療法が主流となっています。
もしも「言葉や行動で治す」ことを主としているカウンセリングへ行き、そこで薬物療法が適切ではないかと判断されたとき、
精神科や心療内科の「薬物療法」に切り替えて、抗うつ剤を処方されるというパターンも少なくありません。
保険適用となる医療行為か否か
カウンセリングに行こうと思って調べたとき、「料金が高い」と感じたことはないでしょうか。
カウンセリング料金は1回につき2000円~1万円の範囲が適切であるといわれています。
ですが、これだけ料金に幅があるのは保険適用外か、適用内かの違いによるものです。
カウンセリングは保険適用ができなくて、なぜ精神科や心療内科では保険適用が可能なのか。
これは今まで、カウンセリングを行うカウンセラーには民間資格しかなかったため。
そして、心理カウンセリングは医療行為に該当しないこと。
こういった点から、カウンセリングでは保険適用ができず自費になるのだと考えられます。
一方で精神科や心療内科にて症状が出ていると判断され、それが医療行為の対象となるのであれば、保険適用となります。
つまり医師国家資格の有無
カウンセリングを行うカウンセラーが取得するのは、国家資格である公認心理師、または民間資格の臨床心理士など。
資格が無くてもカウンセラーになれることから、中には無資格カウンセラーも存在します。
そして精神科医や心療内科医が取得するのは、医師国家資格(医師免許)です。医師免許がないと、精神科医や心療内科医にはなれません。
カウンセラーは資格を持っていなくても「カウンセラーです」と名乗ることができます。
ですが、精神科医や心療内科医は医師として証明できる資格がないと「精神科医、心療内科医です」と名乗ってはいけないのです。
比較時におけるカウンセラーの特徴
薬物療法ではなく、言葉や行動によって症状の改善をサポートするカウンセラーには、コミュニケーションでクライエントの症状を良くしていくなどの特徴があります。
これらについて詳しく知ると、よりカウンセリングで出来ること、出来ないことがわかってくるでしょう。
コミュニケーションで良くする
カウンセリングでは、抗うつ剤などの薬を処方する薬物療法はしません。
そのかわり、「言語療法・行動療法(言語的あるいは非言語的コミュニケーション)」によってクライエントの悩み改善をサポートしていきます。
言語的 コミュニケーション | 相手と交わす言葉の中身であったり手話、筆談 |
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非言語的 コミュニケーション | 身振りや手振り、表情や視線、声のトーンなど |
カウンセラーがあなたの話しに身を乗り出して、視線を合わせ「うんうん、そうなんですね」と相づちを打つ。
こうしたことが非言語的コミュニケーションによる「関心」や「理解(同意)」となります。
カウンセラーは、クライエントの「話し相手」や「助言をする役」として、相談を受ける役目を持っています。
クライエント本人や話す内容について、
- 否定せず受け入れる(受容)
- 話しを真摯に聞き入れる(傾聴)
- クライエントを理解しようとする(共感)
などのコミュニケーションを取ります。
軽度・中度のときに予防できる
海外では、カウンセリングは日常的に利用するサービスとして考えられています。
日本だと「カウンセリング=重い精神的な悩みを抱えている」と捉えられがちです。
しかし、カウンセリングへ行くことによって軽度・中度のときに予防できるというメリットがあるのです。
自転車に乗っていて、転んで膝を擦りむくなど怪我をしたら、目に見えてわかりますよね。
でも失恋をしたりいじめを受けたなど、精神的なショックが起きたとき、心にどれほど深い傷を負ったかは自分でもわかりません。
心の傷は見えないからこそ深刻化しやすいのです。
- 「日常生活を送る上でそこまで切羽つまってはいないけれど、ちょっと気になることがある(軽度)」と感じたとき。
- 「日常生活を送る上で若干の支障がある(中度)」と気づいたとき。
このようなときにカウンセリングへ行くと、「もう何もできない(重度)」と思うくらい深刻化する前に食い止められるでしょう。
基本的に保険適用外
心理カウンセリングは医療行為ではないため、カウンセリング料金は基本的に保険適用外となります。
1回のカウンセリングにつき2000円~1万円という料金の幅があるのはこのためです。
カウンセリングルームを決める際には、「1週間に1回のカウンセリングを半年続けるとして、支払いは継続できるのか」ということも考えておきましょう。
費用がなくなってしまい、カウンセリングへ通いたいけれどお金が足りずに止むなく中断という人も少なくありません。
カウンセラーの中には高すぎるカウンセリング料金に設定しているばかりか、「カウンセリングを受ける前に一括の高額請求」を強要している人も。
そういったカウンセラーは「名ばかりカウンセラー」の可能性があります。怪しいと思ったら避けるようにしましょう。
国家資格を持たないケースも多い
これまで心理系の国家資格というものはありませんでした。
カウンセラーになるために絶対必要となる資格は無く、民間資格ばかりだったのです。
そのため「国家資格を持っていないけれど、民間資格は持っているから、自身が代表となって勤めるカウンセリングルームを開室しているカウンセラー」もいます。
カウンセラーを探していているときに、国家資格を持たないカウンセラーが多いことを疑問に感じる人もいるでしょう。
心理系の国家資格はまだまだ歴史も認知度も浅いため、現時点では国家資格を持たないカウンセラーというケースは珍しくありません。
2017年に国家資格「公認心理師」が誕生
心理系の国家資格である公認心理師という資格が誕生したのは、2017年のことです。
第1回試験実施日は2018年で、このときの受験者数は35,020人。そして合格者は27,876人でした。
民間資格として知名度の高い臨床心理士が2017年時点で累計34,504人というデータがあります。
公認心理師はまだまだ生まれたばかりの国家資格なので、保有しているカウンセラーが少なくてもおかしくないのです。
しかしこれから公認心理師が増えてくると、心理カウンセリングの保険適用についても変化が起きる可能性が考えられます。
(引用:「臨床心理士」資格取得者の推移)
比較時における精神科医・心療内科医の特徴
カウンセラーは言語・非言語コミュニケーションを用いて、クライエントの悩みを緩和・改善していきます。
精神科医・心療内科医は薬物療法を用いる他に、カウンセリングを並行するケースも。
精神科医・心療内科医が診るのはどういった症状の患者かなど、比較時における特徴についてご紹介します。
薬物療法を軸としている
医師免許を持っている精神科医・心療内科医は、主に薬物療法によって患者の悩みを緩和・改善していきます。
薬物療法と聞くと怖そうなイメージを感じるかもしれませんが、精神科医・心療内科医による薬物療法は基本の手段で、とくに珍しいものではありません。
例えば、Aさんという患者が、転職後の人間関係ストレスや不安、緊張によって不眠に陥ってしまったとします。
不眠が続くと眠れないことで更に精神的に不安定になるなど、ますます状態が悪化してしまうでしょう。
こうした症状の患者に抗不安薬などを処方する薬物療法といった手段を取ることで、Aさんは症状が緩和され、状況も改善していくことが予想できるのです。
薬物療法によって「薬に頼ってばかりの自分」、「薬を手放せない状況」に落ち込んだりする人もいますが、しかしある人には効果が感じられるのが薬物療法です。
カウンセリングを並行するケースもある
病院の精神科・心療内科の求人で、国家資格の公認心理師を持つカウンセラーや、民間資格である臨床心理の資格を保有しているカウンセラーを募集していることもあります。
しかしこうしたカウンセラーが行えるのは、「医師からの紹介を受けてクライエントを担当すること」です。
カウンセリングをするのはカウンセラーのみかというと、そうではありません。
医療機関に勤める、医師免許を持つ精神科医・心療内科医も、薬物療法と並行してカウンセリングを行うことがあります。
ただ、「精神科医や心療内科医はカウンセラーと比べるとあまり長く話しを聞いてもらえない」という声も。
これは以下の理由によるものです。
精神科 | 精神的疾患を扱う、精神的な病気を治療する科 |
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心療内科医 | 身体的疾患に心理的要因があり、内科的な病気を治療する科 |
カウンセラー | 心理的な問題を扱う、問題の整理をサポート、解決へ導く心の専門家 |
予備軍ではなく患者のみが対象
精神科医・心療内科医が担当するのは、予備軍ではなく「患者のみ」が対象です。
国家資格あるいは民間資格を持つけれど医師免許のないカウンセラーが担当するのは軽度・中度のクライエント。
「言葉や行動で治す」という手段で緩和・改善できると判断したクライエントを、カウンセラーが担当します。
医師免許を持つ精神科医・心療内科医は、重度の患者が担当です。
- 「言葉や行動で治す」という手段ではどうにもならないところまで来てしまっている。
- 日常生活を送ることが困難となっている。
このような患者は、精神科医・心療内科医の担当です。
ただし、精神科・心療内科へ行ったからといって絶対に薬物療法が行われるとは言い切れません。
必要ならば薬物療法を軸に症状の緩和・改善を進めていきますが、症状の度合いによっては薬が出されないという場合もあります。
医療行為であり保険適用となる
薬物療法は医療行為です。保険適用ができるのは医療行為の場合のみです。
精神科・心療内科で薬物療法とカウンセリングを受けた場合、それが医療行為であると認められれば、保険適用となり費用を抑えることができます。
心理カウンセリングは医療行為にあたりません。
そのため保険適用外となり、精神科・心療内科で保険適用されたときよりも多い費用がかかることがあります。
医師国家資格が必要
薬物療法を行うということからも、精神科医や心療内科医は医師国家資格(医師免許)を必須としています。
この医師免許がないと、精神科医や心療内科医だと名乗ることはできないのです。
「眠れない状態がもう何ヶ月も続いている」、「食事を摂る気力もない」と、医師免許を持たないカウンセラーのところへ行っても、薬物療法は行われません。
薬物療法を望むのであれば、医師免許を保有する精神科医や心療内科医のいる医療機関で相談しましょう。
悩みの種類や状況からどちらに行くか選ぼう
悩みによっては医師免許を持たないカウンセラーが適切であったり、医師免許を持つ精神科医・心療内科医のところへ行く方が良いことも。
どういった悩みの種類や状況のときに、カウンセラーと精神科医・心療内科医のどちらへ相談に行くべきか、3つのケースをご紹介します。
case1.仕事にいきたくない
- 仕事へ行きたくないけれど、理由が明確ではない。
- 仕事へいきたくないけれど、職場へ行けばとくにそこまで悩み続けることなく働くことができる。
こういった場合は、軽度・中度とみなされ、心理カウンセリングへ行くことを勧められる場合が多いでしょう。
- 仕事へいきたくなくて、玄関から外へ出られない。
- 仕事のことを考えただけで涙が出て止まらない。
- 仕事へ行こうとすると体に不調が出る。
この場合は重度とみなされ、精神科や心療内科を紹介されることが考えられます。
精神科や心療内科にて心身の疲労と診断され、診断書をもらうことで会社を休むこともできるでしょう。
「仕事へいきたくないなんて、甘えかもしれない」と諦めるのではなく、日常生活を送ることが困難であれば勇気を出して精神科や心療内科へ行くべきです。
case2.失恋でとにかく悲しい
- 失恋をしてとにかく悲しい気持ちでいっぱい。
- 別れた恋人のことを考えると胸が苦しくなるけれどいつも通り仕事へ行けるし、ご飯も食べられる、睡眠時間も問題ない。
- 失恋の痛手で辛いけれどそこまで困ることなく日常生活を送れている。
この場合は軽度・中度と考えられるため、カウンセリングをおすすめします。
- 失恋をしたことで生きる気力を失い、仕事へ行くことができない。食事も喉を通らず眠れない日々がずっと続いている。
- 失恋で人が怖くなり、外へ出られない、失恋したことを思い出すと過呼吸になる。
こういった場合には重度と考えられるため、精神科・心療内科へ行きましょう。
失恋がトラウマとなり、日常生活を送ることが困難になってしまう人は存在します。
「失恋くらいで」なんて後ろめたく思わず、気になったらカウンセリングまたは医療機関で相談してください。
case3.日頃から情緒不安定な状態が続く
- 常日頃から情緒不安定な状態が続いており、仕事へ行くことができなくなってしまった。
- 考えがまとまらず、一日中ぼーっとしてしまう。
- 突然怒ったり泣いたりして、自分でも感情をコントロールできない。
こういった症状が出ている人は、精神科・心療内科をおすすめします。
精神科・心療内科へ行くことにためらいがあるなら、まずは近くのカウンセリングルームへ行きましょう。
そこで相談した際に専門家から見ても重度だと判断された場合、提携している精神科・心療内科を紹介してもらうという方法もあります。
特に「うつ」という心の病は、不安感や焦燥感、倦怠感、睡眠障害や食欲の低下以外にも、動悸や息苦しさ、頭痛や関節痛など体の痛みが出てくることも。
心だけではなく体にまで影響が及んできたなら、医療機関で相談することでより適切な治療を考えてもらえるでしょう。
まとめ
カウンセリングと精神科・心療内科の違いを知っておくことで、自分の持つ悩みはどちらに適しているのかがわかります。
しかし自分では「軽度・中度だ」と思っていても、専門家から見ると「重度だ」と判断されることも。
カウンセラーから精神科・心療内科を紹介されたときは、医療機関にて更なる専門的な治療を受けることが悩みの緩和・改善に役立つでしょう。